『彼らが本気で編むときは、』生田斗真の演技が美しすぎる(あらすじ感想)

『彼らが本気で編むときは』鑑賞。

トランスジェンダー(心と体の性別が一致しない人)の葛藤や不条理を悲観することなく描かれた、心洗われる作品でした。

トランスジェンダー当事者の一員(主役のリンコさんと逆バージョン)として、この映画は一人でも多くの人に見てその存在を知って欲しい。そう強く思いました。

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『彼らが本気で編むときは』あらすじ

母親が家を出て置き去りにされてしまった少女・トモ(柿原りんか)は、叔父・マキオ(桐谷健太)の家へと転がり込む。

叔父の家には、叔父の恋人リンコ(生田斗真)が同棲しており、トモのことを温かく歓迎する。

元男性のトランスジェンダーであるリンコに戸惑いを感じながらも、トモはリンコのきれいな心に触れ、次第にリンコに心を開く。

「トモと一緒に3人で暮らそう」とマキオとリンコは決意するも、実の母親が家に帰ってきてしまう・・・

『彼らが本気で編むときは、』感想

生田斗真が演じるリンコさんの繊細で丁寧な仕草が美しい

リンコさんは、男性として生まれるも心は女性。

下の工事(性別適合手術)も終えており、名前もリンタロウからリンコに変え、女性として生活しています。

そんなトランスジェンダーの役を生田斗真が演じているわけですが、とにかく所作が美しいです。

物を扱うのも丁寧、動作も静かで奥ゆかしい雰囲気。指の先まで意識しているような繊細な仕草です。

こう言っては語弊があるかもしれませんが、心も体も女性として生まれた人より女性らしい。

見方によっては意識しすぎとも思えますが、リンコさんの心きれいな人柄が浮き彫りになるにつれ、徹底した繊細な所作に納得。

性別うんぬんの前に、生き方が丁寧なんですよね、リンコさん。

人の性格とか生き方って、日頃のふとした言動にでるじゃないですか?

気性が荒かったり自分のことしか考えていないような人って、物の扱いや人への接し方、言葉使いも乱暴だったりしますよね。

リンコさんは心が穏やかできれい。人への接し方も、自分の感情への向き合い方も、すべて丁寧なんです。

その生き方が、日常の言動ににじみ出ているように感じました。

ちなみに生田斗真さんは役に入り切るために、生活の一部として撮影時間以外でもネイルをしたりスカートをはいて過ごしたとか。

素晴らしい役者魂。

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「女であること」を言い訳にする実の母親。人としてトモを守ろうとするリンコさん

リンコさんと出合った当初は、リンコさんのセクシャリティに戸惑いを隠せなかったトモも、リンコさんの愛情を受けるうちに心を開いていきます。

「3人で暮らそう」という時になって、実の母親がトモを迎えにきます。

男が出来てはトモをほったらかしにして出て行ってしまうような事を繰り返す母親に、マキオは「無責任すぎる」と叱咤するのですが、それに対し「女であること」と言い訳にする母親。

「私ね、女なの。母である前に女なの。

一人で育ててるとどうしようもないことってあるでしょ。そんなのも許してもらえないの?」

そんな身勝手な主張をする母親に対し、リンコさんはこう諭します。

女とか、母とかの前に、子供を守らなきゃ。大人として、人として

性別で苦しい思いをしてきたリンコさん。きっと、どんな理不尽な思いをしても、自分の性別を言い訳にはしてこなかったのだと思います。

男とか女とかでなく「人として」どう生きるか。

マキオがリンコさんに惚れたのもそういった人間性でした。

「何でリンコさんと付き合ったの?」と聞くトモに対しこう答えます。

「もちろん、元は男性だとわかった時はものすごく戸惑ったけど、好きになってしまった気持ちはどうしようもなかったんだ。

リンコさんのような心の人に惚れちゃったらね、もう、あとの事はどうでもいいんだよ

男とか、女とか。そういうことも、もはや関係ないんだ

見た目や打算ではなく純粋に人間性の美しさに惚れるマキオも、きれいな心の持ち主なんだと感じます。

当事者として見ていて共感するシーンも・・・

僕はリンコさんとは逆パターンで、心は男性・体は女性で生まれました。

胸を取り、ホルモン治療で声も見た目も男性化し、今は男性として生活しています。

戸籍は女性のままです(子宮&卵巣を取らないと戸籍を男性に変えられません)

リンコさんが学生時代の時のシーンで、男子学生だけが受けさせられる柔道や男用の水着を嫌がり体育の授業をさぼったり、柔道着を敵のように地面に叩きつけたりするところに強く共感しました。

というより、自分の学生時代の葛藤を思い出し、ちょっと辛かった・・・

僕の場合は、水着で女体の体のラインがくっきりしてしまうのが嫌で水泳の授業をさぼったり、小学生の頃は赤いランドセルが屈辱的で、どうしようもない悔しさをぶつけるようにランドセルを地面に叩きつけてました。

よく頑張ったな~と当時の自分をねぎらいたい気持ちになりました。

にしても、リンコさんのお母さんがまた立派です。

「おっぱいが欲しい」という学生時代のリンコ(当時はリンタロウ)に対し、

「そうだよね。女の子だもんね」と理解を示し、ブラジャーを買い与え、毛糸で胸を作ってくれます。

こんな理解のある親って、まれじゃないですかね。

だからこそ、個人的には「親が理解を示す重要性」を映画で描いてくれたことが嬉しかったです。

「リンコを傷つけるようなことをしたら、子供のあんたでも容赦しないからね」とトモに釘を刺すぐらい、リンコさんのお母さんの理解が半端無くてすがすがしいです。

最後に

同性愛やトランスジェンダーなどのセクシャルマイノリティの人って、13人に1人の割合でいると言われています。

左利きの人の割合と同程度なので、普通に生活していれば、周りに1人や2人はいるはずです。

ですが、中には偏見を恐れて本来の自分をさらけ出せない人も多いので、「テレビの中でしか見たこと無い」なんて人も多いかと思います。

なのでこうやって映画で物語として、当事者の苦しみや葛藤を、温かく描いてくれる作品を作ってもらえることが本当にありがたいです。

一人でも多くの人に見てもらいたいと心から思う作品です。

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