WOWOWで放送されると知った時から気になっていた東野圭吾原作のドラマ『片想い』
原作の小説が出たのが学生の頃。性同一性障害の女性(心は男性)が主人公の話だということで、当時はむさぶるように一気に読みました。
なぜなら、自分も主人公と同じ、性同一性障害だから。
原作が出た当時(10年以上前)はネットでも当事者の情報は少なくて、その少ない情報を家族の目を盗んでリビングのパソコンで調べていました。
その頃は世の中にまだスマホなんてなかったし、自分のパソコンなんて持ってなかったし。
性同一性障害というものはすでにテレビでも取り上げられていたから、心と体の性別が一致しない人がいるということは知っていたし、自分もその中の一人だということもわかっていました。
でも、今ほど世の中で理解が進んでいたわけでもなく、カミングアウトして周りの人に拒絶されることが怖かったので、一生隠して生きていくつもりでいました。
そんな若かりし頃の自分にとって、自分の運命に苦しみ、葛藤しながらも望む性別(男性)で生き抜こうともがく主人公・美月は尊敬と羨望の対象でした。
そんな自分も女性として生きることに耐えられなくなり、23で周りにカミングアウト。ホルモン治療も開始して、現在は男性として生活させてもらってます。
今考えると、10年以上も前に性同一性障害というテーマを題材にした東野圭吾の先見性はお見事。
ちなみに、現在は心と体の性別が一致しない人を、「トランスジェンダー」なんてカッコいい言葉で表すのが主流になってきています。
今回は、当事者でもある僕が、ドラマ「片想い」を視聴した感想を語って行こうと思います。
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ドラマ『片想い』あらすじ
10年ぶりに、西脇哲朗は大学時代のアメリカンフットボール部の同窓会に参加する。
その帰り道、部活のマネージャーであった日浦美月に再会するが、どこか様子がおかしい。
「人を殺した」と言う美月を自宅に招き、詳しく話を聞こうとした哲郎たちの前に、男の格好をした美月が姿を現す。
自分は性同一性障害であり、今は男性として生活をしているという美月を、戸惑いながらも哲郎達はかくまうが・・・
原作:東野圭吾
監督:永田琴(永田琴恵)
脚本:吉田紀子
出演:中谷美紀、桐谷健太、国仲涼子、大谷亮平、鈴木浩介、他。
ドラマ『片想い』感想
まず、主人公と同じ当事者としては、主人公が男性に見えるかどうかはかなり気になります。
主人公・美月を演じたのは中谷美紀。泣く子も黙る、美しい女優さん。
どうしても男性には見えなかったです。女性にしか見えない。
中谷美紀が持つ洗練された女性らしさは、抑え込んでもにじみ出てしまうのでしょう。
所作、立ち居振る舞いが美しすぎて、男装した女性としか認識できませんでした。
男性に見えた人、いないんじゃないかな?
「ホルモン治療を開始して半年」の設定でしたら、主人公は体つきも声ももっと男性化しているはずですから、そもそも女性が演じる事自体が厳しいですね。
そう考えると、映画『ボーイズ・ドント・クライ』の主人公を演じた女優さんは本当にすごいですね。男性にしか見えなかったもん。
とは言え、性同一性障害をはじめ、セクシャルマイノリティの人間が持つ葛藤・生きずらさを上手く伝えてくれていますね。さすが東野圭吾。
ドラマも、わりと原作に忠実に作られているように感じました。
・メスを入れるべきは、(当事者の体ではなく)男と女の性別しか認めない社会の方
・体がどうかは関係ない、心は心に反応する
というセリフがぐさっと心に響きました。
これからもっともっと社会の理解が進んで、「男」「女」のどちらにも収まりきれない人間が生きやすい社会になる事を切に望みます。
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