amazonプライムビデオで配信が開始された映画『怒り』、二度目の鑑賞です。
初めて見たときは、「3人のうちの誰が犯人なのだろ」という所に焦点を置いて見てしまったので、細部に注意が行きませんでした。
それが二度目の鑑賞となると、細やかな伏線が張られていたことに気づいたり、タイトルの「怒り」の意味を自分の中で掘り下げられたり、それに共感してしまう部分もあったり。
豪華すぎるキャスト陣の迫真の演技にも圧倒されました。
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映画『怒り』あらすじ
ある暑い夏の日、八王子で夫婦が殺される事件が発生、犯人は殺害現場の壁に「怒」の血文字を残し逃走する。
事件から一年後、沖縄・千葉・東京にそれぞれに素性の知れない男が現れる。
警察の捜査が進むうち、新たな犯人手配写真が公開されると、その顔が男の特徴とそっくりであることに気づく・・・
感想(ネタバレ)
中盤で犯人が分かるシーンが!
これ、初めて見た時は全然気づかなかったんですが、犯人知った状態で見ると分かります。
沖縄の那覇で、泉(広瀬すず)とたつや(佐久本宝)がデートしている時に、離れ島で出会った田中(森山未來)の姿を見かけた泉が、「田中さん!」と呼びかけるシーンがありますが、これに対し田中が全くの無反応。
あんな人気のないところで自分の名前を呼ぶ人がいたら、確実に振り向くはずなのに、気にも止めていない、そんなシーン。
「そうか、田中ってのは偽名だから、不意打ちで呼ばれても体が反応できないのか」と、細やかな伏線が張られていたことに気づきました。
ふらっと一人旅をしている人間がわざわざ偽名は使いませんよね。
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それにしても、田中のサイコパス振りはすごいですね。森山未來が演じたからななおさら恐ろしい感じに仕上がっております。
「俺さ、わかっちゃうんだよね。一目見たらさ、目と目が合うわけじゃん?そうすっとさ、あ、こいつ俺の事コロッと気に入っちゃうな、とかさ。見抜けんの」
完全サイコパス!サイコパスは共感性は無くとも、相手の表情から感情を読み取るのが得意。自分に好意を寄せる相手もまるっとお見通し。
サイコパスは自分を魅力的に見せることが得意でもありますから、沖縄の地でも疑われることなく溶け込んでいましたね(最後は正体をあらわにしてますが)。
泉が米兵に犯されるのを隠れて楽しく見ていたくせに、「聞くだけでも辛い話だよな」なんて嘘でも言えちゃうのも恐ろしい。
サイコパスに関しては、別記事で詳しく書いています。
結局、何の「怒り」だったのか?
この映画で描かれる怒りって、「自分にはどうすることも出来ない悲しみ・悔しさを訴えても分かってもらえない、わかろうともしない周囲(社会)への怒り」なのだと感じました。
「人の痛みに対する無関心」への怒りと言えるかもしれません。
優馬(妻夫木聡)が、自分の母親の葬式に同性の恋人である直人(綾野剛)を周囲からの目を気にして呼べない悲しみ・悔しさ。
東京で風俗嬢として働きぼろぼろの姿で故郷の千葉に帰ってきた娘の噂を広める、周囲の好奇の目をどうすることも出来ない父親の悔しさ。
米兵に犯され心を壊された泉の恐怖・悔しさ・悲しみ。
もがいてももがいても、他人にとってはどうでもいいことで、自分でどうにかするしかない。でも自分ではどうすることも出来ない。それがまた悔しい。
周囲からの無自覚な悪意は、周囲や社会を変えようともがく人間を無気力にします。
そんな行き場のない苦しみを叫んだ泉のセリフがこれ↓
「私がどんなに怖かったか。いくら泣いたって怒ったって誰も分かってくれないんでしょ?訴えたってどうにもならないんでしょ?悔しい思いするだけなんでしょ?」
泉が米兵に犯されるシーンは、画面の向こうから恐怖・痛みが伝わってくるようで本当に目を背けたくなります。
犯人が抱く怒りは特定されていませんでしたが、「日常に潜む様々な怒りが捻じ曲がった形で集まったもの」なのではないかと感じました。
いくらバイト先で理不尽な目にあったからといって、暑い中途方にくれる見ず知らずの自分にお茶をくれ人を「自分を哀れんで見下している」と思い込んで殺すってのは常軌を逸してますけど。
ほんと、ただのサイコパス。
相手をいたわってした行いを哀れみと思われ恨まれるなら、ヘタに他人に親切が出来ないじゃないか・・・
信じることは覚悟がいること
散々疑われた田代と直人が何の罪もないことが分かると、彼らを疑った自分を嘆きます。
一切周りの人間から疑われなかった田中が犯人だったことは何とも皮肉・・・
人を信じぬく事は難しいわけですが、素性が知れない&逃亡中の凶悪犯と特徴が一致していたら、そりゃあ怖くなりますよね。
殺されたくないもん(汗)
「万が一この人が罪をおかしていても、それでも一緒に生きる」ぐらいの覚悟がないと、人を信じ抜くことなんて出来ないのかもしれません。
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